蔵元便り 柚野の里から

2011年12月

仕込第一号

お昼の鐘が鳴り自宅に戻ると、もろばこに載ったききじょこが、いつもの場所に置かれて、蔵元を待っていました。酒をしぼり始めると、蔵から搾りあがったばかりの酒が、きき酒されるのをいつもここで待っています。今年の仕込一号が、しぼり上がる日。お昼を食べようと気楽に思っていた筈が、一気にモードを変え緊張し始めました。
ききじょこの底に描かれた青い二重丸は冴え冴えとくっきりと見え、色良し。ききちょこに被せたガラスの蓋を外し、すぐ鼻をつけると、フワッとたちのぼる清々しい立ち香。口に含むと、芳醇な新酒の香りが鼻に抜け、しぼりたての原酒らしいボディーのある辛口の味が舌を刺激し、最後にまろやかな甘みが口一杯に広がった。
蔵人達の気持ちが伝わってくるような「よしっ」と気合いが入る、仕込第一号でした。畑福杜氏が引退した後を引き継ぐ、新生富士錦が醸す、初めての新酒。蔵元も一口含み、顔がほころんでいました。

その新生富士錦には、畑福杜氏と共に長年酒造りに携わってきた根本副杜氏や佐野など、4人が同じメンバーで富士錦の酒造りを体現している彼らと共に蔵に入る新しい小田島杜氏は、緻密に酒造りの経過をデータとして蓄積し、それをもう一度酒造りに反映させる事のできる腕のある杜氏です。

酒造りの最新醸造機器も器用に使いこなし、富士錦の酒造りに新しい息吹も芽生えています。今年の新酒、「しぼりたて原酒」は本日発売です。どうぞ、ご期待ください。

そんな造りの真っ只中に、先日名古屋に行ってきました。名古屋国税局の平成23年度清酒鑑評会の表彰式でした。この鑑評会は市販酒で競われますが、今年は、吟醸の部・純米の部・本醸造の部のすべての部門で栄えある優等賞をいただきました。

ご愛顧いただきました皆様に感謝の気持ちを込めて、畑福杜氏ともどもご報告させていただきます。寒暖の差が激しい毎日が続いております。

皆様もご自愛くださいますよう、お祈り申し上げます。