蔵元便り 柚野の里から

2013年06月

世界文化遺産

 早苗が植わった田んぼにさかさ富士が映り、五月晴れの空を、ツバメが飛び交っています。
気温の変化が激しかったこの1ヶ月ですが、お元気でお過ごしでしたか?
富士錦では、冷え込む日も大風の日も晴れの日も無事過ごした苗が、昨日田植えも迎えました。 農耕民族の血が騒ぐのか、田植えを無事終えると、ホッと安心します。
五月初旬、新聞のトップ記事に「世界文化遺産「富士山登録」へ…」と いう文字が躍り大きくその時に向けて、前進しました。
いよいよですね。 六月下旬に行われるユネスコの世界遺産委員会で承認されれば、 ここで正式認定となります。
今まで、毎日当たり前のように見ていた富士山が、 日本の富士山から世界の富士山へと認められる事は、 大変喜ばしいと同時に、我々の手を離れ世界のルールで規制が掛けられてしまいそうで、 ちょっと不安もありますが、今までの富士山エリアの保全が十分だったとも想像できます。

日本には自然や景観を守る為、日本独自に国立公園や国定公園などが定められています。 これらは、明治四十四年に「富士国立公園の設立」として初めて建議され、 昭和六年に国立公園法が成立し、富士山周辺は昭和十一年に「富士箱根国立公園」が、 成立から八番目に指定されました。
やはり、過去にも日本独自にこの環境を守らなければならないと考えた人たちがいたのです。
そうした人たちや、その後の様々な人たちの想いの積み重ねが、 今回の嬉しい知らせに至ったのでしょう。
富士錦の仕事は、この富士山からの良質な水無くしては成り立ちません。 改めて富士山に感謝しなくてはならないと感じています。富士錦の感謝の形は、この水を守り続け、この恵みで美味しい酒を醸し、 お飲みいただく方たちの生活に潤いをもたらす事です。
里に恵みをもたらす富士山が、時代と共に、 これからも多くの人たちの役に立つ事を、心より願っています。 田んぼに映る富士山を眺めながら…。