蔵元便り 柚野の里から

2017年09月

蔵元の秋

 毎年の事ですが、9月の蔵は慌ただしく時が過ぎます。 周りでは稲刈りが最盛期となり日々稲の実り具合を心配しながら、今年の冬に行う、お酒の寒造りの予定を立てます。 そして、冬に出来なくなる仕事をまとめて一気に仕上げます。 ふとカレンダーを見れば、もう9月が終わっちゃう…と、気持ちばかりが焦る、秋は少し憂鬱な季節のひとつです。
そんな気持ちを晴れやかにしてくれるのが、この時期に行う試飲会でお目にかかるお客様の顔です。 九月は昔から、日本酒シーズン到来の季節として、試飲会が多い月でもあります。
九月上旬には東京で静岡県の蔵元が集まって地酒まつりが賑やかに開催され、同じ会場では、他3団体の酒祭が開催されていました。
又、毎年十月一日の「日本酒の日」に一般の方も参加できる恒例「静岡県地酒まつり」が、今年は浜松市のホテルコンコルドで行われます。是非、遊びにいらしてください。


蔵元の集まりである「日本酒造組合中央会」では、3年前からこの日に「日本全国・日本酒で乾杯キャンペーン」を行っており、全国から様々な乾杯風景の画像が集まり協会のホームページに掲載されています。この日は、海外からも注目が集まる「國酒」である日本酒で、「一緒に日本酒の日を楽しもう」という蔵元にとっては特別な日。 そして、この日を境に酒蔵の新年度が始まる「正月」のようなけじめの日なのです。
製造計画も無事立ち、あとは蔵人の入蔵を待つばかりとなりました。こんな中で、やり忘れた事に気づいて慌てたり、天気を見ながら稲刈りを行ったりと、心も体も落ち着きませんが、毎年掲げる「昨年よりも、良いお酒を造る」という目標にぶれはありません。
夏を越したお酒の出来を見る「のみ切り」の結果も良好で、間もなく、酒造りが始まり蔵の片隅から白い蒸気が早朝の寒空へ上がります。
酒造りが無事にスタート出来るよう、もうひと頑張りです。